ロープアクセス工法とは?

ロープアクセス工法とは?

ロープアクセス工法での作業

目次

はじめに:ロープアクセス工法とは
・ロープアクセス工法の概要
・他の高所作業方法との比較

1.歴史と発展
・ロープアクセス工法の起源
・技術の進化と現代への適用

2.基本原理と技術
・使用されるロープと器具
・安全性と効率性のための技術

3.安全規格と訓練
・国際的な安全基準
・専門的な訓練と資格認定

4.応用分野
・救助活動
・映画やドラマ撮影

5.ケーススタディ:実際の使用の例
・商業建築での使用例
・特殊な環境での挑戦

まとめと結論
・ロープアクセス工法の重要性と可能性
・課題と今後の見通し

 

はじめに:ロープアクセス工法とは

●ロープアクセス工法とは、伸び率の低いスタティックロープと懸垂降下や登高用の器具を用いて、名前の通りロープ技術を用いて壁面を自由に行き来きし、建築作業や調査点検を行う方法。

もともとは、クライミングや洞窟探検の技術をもとに発達したロープ技術である。

この技術を建築や土木の現場に用いることで、足場、ゴンドラ、高所作業車などを用いることなく壁面や急斜面を自由に行きが可能となる。

大掛かりな設備などを準備する必要がないため、実施までの準備等が必要なく、安価で迅速な動きが出来る。また、限られた狭隘空間などのスペースにも人間一人が入ることさえ出来ればその場所にアクセスすることが可能である。この身軽さを活用することで、調査や点検、簡単な補修や塗装などで効果を発揮する。

但し、身軽な分、大きさや重さのある資器材が必要とされる工事や塗装には向かず、このような場面では、足場やステージを組み立てる工法に軍配があがる。

 

●他の高所作業方法との比較
ロープアクセス工法と比較される高所作業は、足場、ゴンドラ、チェアーゴンドラ、高所作業車、はしご等がある。

・足場
設置や撤去に時間と費用が掛かる。但し、安定した活動スペースが出来るため、大規模な工事等に有効な方法である。

・ゴンドラ
基本的に、既設のゴンドラ設備を必要とするが、設備があれば、移動が出来る安定したスペースを活用することが出来る。頻度が高く、一定の作業が繰り返される場合に有効な方法である。

・チェアーゴンドラ
ゴンドラほど、大きなスペースは必要としないが、ワイヤーケーブルを用いてモーターの駆動で上昇や降下を行うことが出来る。一人乗りのゴンドラ。

・高所作業車
トラックにバケットと呼ばれる活動スペースが積載された移動式の足場。柔軟に移動することが出来きる高所活動スペースを産み出すことがメリットである。

但し、車両が入っていくスペースやバスケットを伸ばすアームが一定までしかないため、高さの制限が出来てしまう。また、運転時には、車両の転倒防止のため、アウトリガーと呼ばれる車側部に突き出した装備を出すための追加スペースが必要となる。

・はしご
手軽に移動させることが出来て、高所へのアクセスが可能な方法。安定度に難がある。手軽な分、多くのシチュエーションで活用されているが、その分、転倒や落下事故も多く注意が必要である。資器材を手に持ってはしごを登り作業するなどの場合に限界が生じる。

 

1.歴史と発展

●ロープアクセス工法の起源
起源は特定の瞬間や出来事ではなく、様々な要因の技術の進歩によって発展してきています。
主な技術として登山や岩登りなどで、垂直な岩壁や斜面を登る技術から応用したものだと考えられています。

●技術の進化と現代への適応
1970年代から1980年代にかけて、ロープアクセスの技術は工業用途での高所作業や建設業界で広く普及し始めました。フランスを中心にいくつかの企業が、ロープアクセス技術を専門とするトレーニングやサービスを提供していき、1980年代から1990年代にかけて、ロープアクセス技術は国際的に広がり、多くの産業分野で採用されました。

現代では、救助目的や建設業、風車発電や石油・ガス産業など、高所での作業が必要な分野で幅広く使用されています。

 

2.基本原理と技術

●使用されるロープと器具
・スタティックロープロープの伸び率が少なく、定位や支持に適しているロープです。

・ハーネス:作業者が体を固定し、ロープに安全に取り付けるために使用します。

・カラビナ:ハーネスやロープなどを連結したりするために使用します。

・下降器:制御された速度で降下するために使用します。ロープを解放したりブレーキをかけたりして、降下を制御します。

・アサップ:操作をしなくても作業者の動きに合わせてロープ上を移動し、急加速した場合や衝撃がかかった場合には、ロープ上でロックして墜落を止める器具です。

●安全性と効率性のための技術

作業で使用するロープや器具は定期的に点検を行い不具合があるものは即時に使用を中止しています。
他にも、高所作業を行うには資格が必要となっており、適切な教育を受ける必要があります。使用方法の確認などのトレーニングも行い、作業が安全に行われるよう対策を取っています。

また、ロープアクセスは足場を必要としていないため、狭い場所やアクセスが難しい場所でも迅速な対応ができ、部分的な作業も行うことも可能としています。そのため、足場を組む時間やコストを削減することができ、作業効率もよくなると考えられます。

 

3.安全規格と訓練

●国際的な安全基準
ロープアクセスにおける安全な作業のための標準となるガイドラインがあり、作業者が安全かつ効率的な方法で高所作業を行えるようになっています。
国や地域によっては国際基準を採用していますが、場所によっては独自の安全基準が存在することもあるので、考慮する必要があります。

 

●専門的な訓練と資格認定
ロープアクセス工法を用いて作業をする作業者には適切な訓練と資格が必要です。

・フルハーネス特別教育
高所でフルハーネスを使用する際に必要となる資格です。
「高さ2m以上の場所で作業床を設置できない場合、フルハーネスを付けて行う義務」が労働安全衛生法で定められています。

安全帯が「墜落制止用器具」に変わります! (厚生労働省)

・ロープ高所作業特別教育
昇降機能のあるロープを用いて高所作業をする際に必要とされる資格です。
「高さ2m以上の場所で作業床を設置できない場合、昇降器具を用いて体を保持しながら行う作業に従事する」際に必要となります。こちらも労働安全衛生法で定められています。

「ロープ高所作業」での危険防止のため 労働安全衛生規則を改正します (厚生労働省)

当社ではロープアクセス作業に必要な資格を取得できる講習会を実施しております。
興味のある方はこちらから詳細をご覧ください。
レスキュージャパン講習会の開催

 

 

4.応用分野

●救助活動
ロープレスキューと呼ばれており、欧米で山岳救助に使われていた資機材や救助方法を日本の消防隊などが取り入れてた救助方法で、高低差のある場所や急斜面、断崖のような垂直面や川の中州などの救出が困難な災害現場で実施されています。

●映画やドラマ撮影
ビルの外側から撮影したショットやクレーンなどではアクセスが難しい場所からの視点を撮影することが出来るほか、特殊なアクションが必要な場面でロープアクセスの技術を使い、安全に撮影ができるため用いられています。

 

 

5.ケーススタディ:実際の使用例

●商業建築での使用例
主に外壁の点検や診断で用いられており、足場を組む必要がないため、外観を気にせずに作業を行うことが出来ます。また、高層建築の窓ガラスの清掃でも多く用いられております。他にも、看板や照明といった外部に設置されているもののメンテナンスにも活用されています。

●特殊な環境での挑戦
特殊な形をした建築物や橋梁の調査、クレーンや煙突、風車などといった、足場を組むことが難しく、狭いスペースの調査や点検を行っています。

上のお写真のように、作業員一人が入ることのできる隙間があれば打診調査が可能です。
赤外線やゴンドラでは調査しにくいような狭い所にうってつけです。

 

 

まとめと結論

●ロープアクセス工法の重要性と可能性
ロープアクセスは高所での作業において足場やクレーンを使用するよりも安全性が高いとされおり専用のセーフティ機器を使用しているため、高所からの作業でも安全性を保つことが出来ます。また、足場などの建築機材を使わずに作業ができるため、コストを抑えることも可能とし、急な調査や補修作業にも素早く対応できます。

ロープアクセスは建築、エネルギー、通信、自然科学といった多岐にわたる産業で使用されており、高所作業や難所へのアクセスが求められるあらゆる分野で可能性があります。災害時や非常時に高所で独立した場所へのアクセスや救助活動にもロープアクセスが活用されています。

このように、ロープアクセスは多岐にわたり利用かのうであり、その柔軟性や効率性から様々な分野で採用されています。

 

以上、

今回は私たちが行っています、「ロープアクセス工法」についてご紹介させていただきました。

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